ニヴェルネー運河クルーズ 2014年6月

ブルゴーニュ ニヴェルネ運河クルーズ 1週間 片道クルーズ(16段ロック 挑戦記)

クルーズコース

数多くあるフランスの運河の中でも屈指の美しさと言われるニヴェルネ運河を初夏、夫婦でクルーズしました。出発ベースはクーランジュ・シュール・ヨーン(Coulanges sur Yonne)。
船はTarponシリーズ中、最小のTarpon 32。 小さくても2キャビン(シャワールーム+トイレ)とラウンジつき。2人には充分な広さです。とりあえず船尾のキャビンを寝室にし、船首のキャビンを荷物置きとしました。

6月7日(土)晴れ
レンタカーでCoulanges sur Yonneクーランジュ町の手前のスーパーに寄り、食材を購入してからベースへ。ベースにて乗船やレンタカー移送手続きをし、船内説明と簡単な操船講習を受け17時30分出港。わずかな差でClamecyクラムシ手前でロックが閉鎖時刻(19時)となり、そこでぺグをうち土手で停泊。  本日 8km 4ロック
2キャビンのTarpon 32 Tartpon 32 見取り図 クラムシーには行くにはヨーヌ川を航行します。ロック48、47bは使用されていません ペットも乗船可です 

6月8日(日)晴れ
朝、舫いを解きロックを超えて10時クラムシ着、停泊。
水を補給するも、陸電用ケーブルが入っていないことに気づき携帯電話でベースに連絡、届けてもらうことになった。
自転車で町の散策。クラムシは小さいけれどとても美しい町です。ブブロン川Beubronとヨーヌ川Yonneが交差する地にあり、いにしえの筏流しの拠点でした。ベツレエム橋Bethleemの中央に佇み川面を眺める筏師の像は、昔、筏がパリに向かって大量に運ばれて行った光景を今一度見ようと、じっと待ち続けているようです。ランチはチュニジアンレストランでクスクス。とても美味しかった。
午後からロマン・ロラン・美術歴史ミュージアムを見学。ここはロマンロラン(1866年~1944年 平和主義・反ファシズムの作家「ジャン・クリストフ」など)の生家です。1階には絵画が展示されています。2階には近在で発掘された考古学遺物の展示。3階には晩年をクラムシー近郊で過ごした世界的に有名なフランス人グラフィックデザイナー、シャルル・ルポーの作品展示。4階がニヴェルネ運河の歴史をたどる展示です。
18世紀末、人口増加の一途を辿るパリ。セーヌ谷で切り出されていた暖炉用の薪となる木材資源が枯渇しました。パリの冬は寒いので暖炉の薪がなくては暮らせません。そこで南東250kmほど離れた豊かなモルヴァンの森が注目されました。この時利用されたのがセーヌ川と上流で繋がるヨーヌ川。しかし自然の流れのままでは筏を流すのは難しく1784年、まずロワール谷のバゾワの森から薪用の筏を流すための運河の掘削工事が始まりました。この工事はフランス革命のとき中断され1809年に再開、1843年に至りやっと全長174Km、116ロックを持つロワール渓谷とセーヌ川を結ぶニヴェルネ運河が開通しました。森の中で切られ小川に投げ込まれた樹皮が付いたままの丸太は、『エクルゼ』と呼ばれる人工の流れに押されてヨーヌ川までごちゃごちゃと流れてゆきます。ヨーヌ川に出ると丸太はここクラムシーで筏に組まれ、20日間以上を掛けて、高低差72mを克服しパリの市中ポンヌフ辺りまで運ばれていきました。当時の町の活況を彷彿とさせる写真、動画等がふんだんに展示されています。パリでそのまま使えるように1m弱に切り揃えた木材をヨーヌ川の支流に投げ込む映像は圧巻です。19世紀パリの繁栄はモルヴァンの森とこの運河に支えられていたと思いたくなるような映像です。
4階には勿論ロマン・ロランの展示室もあります。是非訪れてください。
船に戻ると陸電用ケーブルがすでに届いていました。
嘗ての筏流しの拠点クラムシー:ヨーヌ川とベツレエム橋 クラムシーの港 パリはポンヌフの辺りまで筏で流しました グラフィックデザイナールポーの作品展示 クスクスを食べたらテーアラマントでしょう ヨーヌ川の水面を今も見つめる筏師の像
 
6月9日(月)晴れ 精霊降臨祭Pentecoteの休日
8時15分出港 途中船を停め自転車でドルヌシDornecyへ行き洗濯場を見学。カフェでコーヒーブレイク。
クルーズ再開。タネTaneyの手前に跳ね橋がありました。どうやって操作するのかわからず、手前の浮き桟橋で降りて跳ね橋を見に行くと、橋のたもとに大きなハンドルがついていて、まわすとオープンの表示が・・・ハンドルをぐるぐるまわしてみると跳ね橋が上がってゆきました。船が通り過ぎた後、再びハンドルを回して橋をおろします。それから船に戻って再び出発。
16時30分タネに到着、停泊。1泊12ユーロ(水・電気・WiFi)本日 18km 9ロック
湧き水利用のドルヌシの共同洗濯場 ニヴェルネ運河には様々な跳ね橋があります。全て自らの手で開けてください 桟橋に着け一人が跳ね橋を開けに行きます こんな尻押し式ロックもあります 16連ロックは観光スポットにもなっています 立ち寄ったタネイTannay村の教会のステンドグラス

6月10日(火)晴れ どんどん暑くなり、気温35℃を超える
土手に舫ってランチの後、暑さにぐったりして休んでいたら、土手の向こう側で人声が・・・見に行くと、ヨーヌ川で子供たちが泳いでいました。あまりに気持ちよさそうだったので、私達もちょっと水浴びしてみました。
船に戻り、舫いを解き、すぐのロックに着くと、今川で泳いでいた子供たちがみんなでロック作業を手伝っていました。手を振って挨拶を交わします。
16時30分、コルビニCorbignyの町を出外れたPK78で停泊。
1泊17.4ユーロ(水・電気・WiFi)本日 17km 15ロック 
自転車でコルビニまで買い物に。連日の暑さで飲み物が不足しています。水とジュースを大量に買いました。肉屋さんでサラダなどお惣菜も買いました。その肉屋さんは牧場でシャロレ牛を飼育していて自分の牛がチャンピオンになったと、写真を飾って自慢していました。
隣のレストランでシャロレ牛のステーキのディナー。美味!!
キーパーの引継ぎ? 静寂な森の中の運河です 左手はモルバンの森 ロックキーパーは大学生のアルバイト。船の来ない時は本が読めるとの事 ロック待ちの間に昼食を 

6月11日(水)晴れ 相変わらず暑い
朝出港、途中ロック内で舫い、ランチ。
14時サルディSardy-sur-Epiryに到着。時間的には余裕がありますが、明日の16段ロックに備え本日はここまで。停泊 本日4km 8ロック
ニヴェルネ運河のハイライトであるサルディSardyの16段ロックを陸から見学のため、自転車で曳船道をベイBay湖までサイクリング。
サルディの16段ロックはミディ運河の7段ロック(7個のロックが階段状に一塊になっている)とは違い、独立した一つずつのロックが近接(100m程)して16個続いています。ここは、芸術家たちの天国になっていました。今は1人のロックキーパーが複数個のロックを世話しますので、使われていないロックキーパーハウスを占拠して、陶芸小屋あり、オブジェの製作小屋ありで、それぞれの芸術作品が曳船道や岸辺にたくさん展示されています。サイクリングも楽しい道でした。
16段ロックの手前で碇泊し、翌日に備えます メルヘンな作品ですね。後ろはロックキーパーハウスです ロックハウスが陶芸家のアトリエに 芸術家の好む運河です どちらがお好き?表・裏の2面アートです どちらがお好き?至るところに作品が

6月12日(木)晴れ
本日は16段ロック越えです。ロックキーパー1人が3~4ロックを担当して、ずっと一緒についてきてくれるので安心してロック超えができます。ここのロックは手動式ですが、ハンドルを回して扉の開け閉めをする他所の運河の手動式ロックと違い、重い木の棒を背中で押して、てこの要領で扉を開きます。ずっしりと重量感のあるこの木は、山から切り出した後、何年間か水に沈めておいてから使うと、腐らないのだそうです。
8番ロックでランチ。ここはJ・J(ジェイ・ジェイ)がコーヒーとクレープの店をだしています。ランチの後はJ・J特製のクレープを食べました。とっても美味しかったのだけれど、フォークもナイフもなしだったので、手をべたべたにしながら食べました。J・Jは世界のあちらこちらを放浪してきて、今はクルーズのシーズンだけここで過ごしているそうです。
サルディの最後のロックを越えるとき、ロックキーパーさんが、『僕はいろいろな国の国旗を集めて家に飾っているのだけれど、まだ日本の国旗を持っていないんだ。何故って君たちが初めてここを通る日本人だからね。だから是非日本の国旗を譲って欲しい。』と言います。そこで船尾につけていた日の丸をはずして差し上げるととても喜んで、『あそこが僕の家なんだ。今からこの国旗を飾りに行くから見てて。』とオートバイに飛び乗って走ってゆきます。運河の岸辺、ちょっと先に彼の家があって、船より早く到着した彼が庭で日の丸を振っています。私達も船から手を振り返しました。
16段ロックを超えるとすぐ、コランセルCollancelle の3トンネルの最初の一つに入ります。トンネル手前に信号があり青を確認して入ると、3つのトンネルの区間3.8kmが片側一方通行、つまり、私たちの船が3.8kmの区間を独り占めして走るわけです。気持ちいい~~!! なが~いトンネルの中は真っ暗、船の船外灯を点します。やがて出口の明かりが見え始めると幻想的な光景でとってもステキ!でした。トンネルとトンネルの間は両岸がうっそうと茂った森。この光景は船からしか見られない貴重な風景です。
15時 ベイ湖に到着、停泊。1泊9ユーロ(水・電気・WiFi)本日 8km 16ロック 3トンネル
ベイ湖にはビーチがあると聞き行ってみると、ちょっとショボイビーチでした。でも暑かったのでちょっとだけ泳ぎました。戻る途中でカタマランをレンタルしている店があったので聞いてみると1時間28ユーロ。お財布を覗くと26ユーロちょっとしか入っていなくて少々足りなかったのですが、まけてもらって1時間レンタルしました。カタマランは早く走るので、気持ちよかったです。でも舵の利きが悪くてちょっと苦労しましたけど・・・
数年間水に浸けてから使うそうです キーパー小屋の住人J.J.(長髪)ロックキーパーではありません。放浪の芸術家です J.J.特製クレープ。是非とも味わってください(5€) J.J.カフェの特等席ジャズが流れています 3トンネル入り口、ブリュレ港のキーパーと進呈した日本国旗 信号はロックキーパーが管理しています 最長トンネルは758mですが、全て入り口から出口が見通せます 約3.8Km続く一方通行の水路に3つのトンネルがあります トンネルを抜けるとベイ湖だった 泳ぐこともできますが 

6月13日(金)晴れ
14時 シャティヨンChatillon-en-Bazoisに到着。ここが終着ベースです。
本日 12km 12ロック
町をぶらぶら散策。オーベルジュでディナー。ここは前にも立ち寄ったことのある店でとても美味しい店です。1906年発行の最初のミシュランガイドにも載っているのが自慢の店です。
シャティオン・アン・バズワのベース 1843年設置のベース事務所 ベースの事務所と移送されてきた車 町の人気レストラン。1906年版ミシュランガイドでも紹介されています 祝杯と共にブルゴーニュの定番をいただきました 

6月14日(土)晴れ
9時 船の返却
クーランジュから移送されてきているレンタカーに乗り込み出発です。

ニヴェルネ運河はヨーロッパで最も美しい運河の一つとされています。理由は運河の大半が森沿いを行く静寂さ、多様な建造物、トンネル、跳ね橋、16段ロック、円天井の教会などにあるのでしょう。芸術家にも好かれるフランスでも2番目に訪れる人の多い運河です。
16段ロックとは如何なるものかと若干の不安もありましたが、実はロックが100m程度おきに16個連なっているもので16連ロックと言ったほう良いかと思います。1人のロックキーパーが3~4個のロックを操作します。船と共に移動し、次の区間のキーパーと引き継いで行きますのでかえって安心です。キーパーには男女のバイト大学生が多くいました。
異常気象で連日35度の日差しを浴びてのクルーズでしたが、確かに、手動で開ける跳ね橋があったり、陶芸家や彫刻家の小屋があったり、水面に映る樹木の美しい、静かな心休まる運河でした。
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絵葉書 流れ着いた木材 絵葉書ルポーの作品1 絵葉書ルポーの作品2 絵葉書ルポーの作品3
旅のヒント:今回のようにクーランジュからですと、まずクラムシーの美術・歴史ミュージアムを見学し、いくつもの跳ね橋を通ります。開けた跳ね橋は必ず閉めましょう。16段ロックに入る手前Corbignyあたりで名産シャロレ白牛のステーキを食べ生気を養いましょう。また一度下見も兼ねて曳船道をサイクリングしましょう。ロックの様子が解るとともに野外に展示されている多くの芸術作品を鑑賞できます。16段ロックの途中では停泊もできますので岸に舫い、夜空の星を楽しみましょう。J.J.の店でクレープに舌鼓を打ち、ジャズ音楽を聴きながら暫し休みましょう。3トンネルのある全長3.8Kmの水路は信号機のある一方通行です。水路直前のロックキーパーにトンネル通過の意思を伝えて、青信号を待ちましょう。トンネルを抜けたベイ湖は水泳もできます。また終着地シャティオンでは1906年からのオーベルジュでクルーズの成功を祝し祝杯を挙げましょう。

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