アフタークルーズ II

ロックフォール

3.Roquefort-sur-Soulzon (ロックフォール・シュール・スールゾン)
ロックフォール・シュール・スールゾンはモンペリエから100㎞程内陸に入った南仏の小さな村です。フランスにはいくつものロックフォール村がありますのでスールゾン川岸のロックフォールとことわるのですが、この村が生み出す世界的に有名な青黴チーズを呼ぶときは単にロックフォールです。村の南側に岩山のコンバルー山があり、その昔の山の崩壊によってできた洞窟にはたくさんの亀裂が走り、その亀裂から流れ込む外気がフルーリと呼ばれて、洞窟内の温度を10℃以下、湿度95%以上に保ちチーズに魔法をかけます。
あのえも言われぬロックフォールチーズは現在も100年以上前の製法を墨守しこの洞窟内で製造されています。ラクーン種牝羊の乳から作られるチーズの製造工程を地下洞窟に入りガイド付きで見学できます。温められた乳は乳酸菌と酵素を加えられた後、洞内で採取したペニシリン菌を埋め込れて地下洞窟の木棚に移され、暗闇の中でのフルーリと塩とペニシリン菌の共演を待ちます。2~3週間後には菌の急激な繁殖を防ぐために錫箔に包まれ,3~9ヶ月をかけてゆっくり熟成してゆきます。
ロックフォールチーズの歴史は古く、ローマ時代に遡るとも言われています。15世紀にはシャルル大帝により独占権が認められ、20世紀に至りAOP(原産地統制呼称)が認定されています。
ガイド嬢によれば「この地方に昔羊飼いの少年がおりました。ある日遠くに美しい少女がいるのを見つけ、羊の群れは牧羊犬に任せ、サンドイッチを涼しい洞窟内に隠し、後を追うことにしました。何日間も少女の後を追いましたがついに追いつくことができず、とうとう少年はあきらめました。がっかりして洞窟に戻ると、なんとパンとチーズはカビだらけ、でもあまりの空腹にそのサンドイッチを口にした少年は驚きの声を上げました。『美味しい!』こうしてロックフォールは誕生しました。」
コンバルー山とロックフォールの村 南側以外も石灰岩台地で囲まれているロックフォール村 1842年以来ロックフォールチーズを製造しているソシエテ社 小さい村にはチーズ会社が集まっています。左手は第2番目パピヨン(蝶)社 連日世界中からチーズの秘密を知りに来る観光客を相手に、ブランケットを用意して説明するガイド嬢 ロックフォールチーズのあの風味を生み出すロックフォール・ペニシリュウム菌はここにいます カバ二エールと呼ばれる女性たちにより丁寧に錫箔で包まれ香りと共にゆっくり熟成していきます ソシエテ社の熟成庫。木棚の上に並べられています ソシエテ社:地下5階、地上7階建てです ロックフォールチーズの代表格ソシエテ社のチーズ 

メモランダム:現在ロックフォールには7つのチーズ会社がありますがどの会社もフルーリの流れる独自の洞窟を所有しています。その幾つかは見学ができます。勿論、美味しいロックフォールチーズも販売しています。ガイド嬢の説明を聞きペニシリンアレルギーの知り合いを思い出し、彼はロックフォールチーズを食べても大丈夫か?と尋ねました。『医療で使うペニシリン菌とは違うので大丈夫だ。』との答え。なるほどいつもブルーチーズ食べてたなーと合点がいきました。
地下のカーブで女性たちが1つ1つ丁寧に錫箔を着せているのを見て、シャンペンのドン・ペリニョンの工場を見学した時、やはり暗いカーブの中で作業員が毎日シャンペンボトルを1/4周ずつ手作業で回して滓(おり)が1ヶ所かに溜まるのを防いでいるのを見たときに感じた不思議な思いをここでも感じました。

Saint Leon

4.Saint Leon (サン・レオン)
地中海岸の都市モンペリエから中央山塊方向に100kmほど入るとタルン川渓谷に架かる主塔の高さが343メートルの世界一高い橋ミヨー橋があります。この橋を過ぎ20Kmほど行くと『昆虫記』で有名なジャン・アンリ・ファーブルの生家のある小さな村サン・レオンとなります。生家は夏季限定のファーブルミュージアムとなっており、彼の幼少期の生活の様子が覗われます。この小さな村には大きなテーマパークMicropolisミクロポリス:昆虫の都市があります。2,400㎡の昆虫館には世界各地から集められた熱帯・亜熱帯の蝶、巨大蟻、蜂等など70種以上の生きた昆虫が自然界の状態で15の部屋に展示されています。
隣接する丘のエリアには昆虫のカーニバルと銘打った12のステージがあり各ステージでは鉄やブリキでできた巨大なアリやバッタやコウロギや水すまし等などが音楽と踊りでお客様を迎えてくれます。昆虫のオーケストラ、昆虫の舞踏会、昆虫と怪物の戦いなど見ても聞いても楽しいステージが続きます。南フランスの広大な山々の景色を愛でながら色とりどりの野草が咲き乱れる道を行くと最後の部屋ではファーブルが最も好きだったフンコロガシ(Scarab:タマオシコガネ)が地球を後ろ脚で転がしています。そこには『ミクロポリスを訪れた人間として小さき皆様の多様性、重要性を認識しましたので今後は絶滅に追いやること無くこの星の上で共存していくことを今日ここに誓います』との誓約書が掲示されています。
サン・レオンの村とファーブルの生家 ミュージアムとなっている生家,庭に銅像が建っています Micropolis裏側の丘がカーニバル会場  女王バチのダンスが始まります 蝶のオブジェの後ろは中央山塊に続く山並み

よく動きよく歌うバッタ達  怪物を水攻めにします フンコロガシは地球の清掃係です ミヨー橋、下はタルン川渓谷 駐・停車禁止なので走り抜けます

メモランダム:昆虫館には先生に引率された多くの小学生がいました。フランス政府とEUが共同出資して創った昆虫のカーニバルの散歩道はただ一言素晴らしい。センサーで感知し客の来場に合わせ演奏し、踊り、歌い、水で怪物を攻撃し出す虫たちは何とも可愛いく、男性合唱団のテンポの良い歌声は回りの山々にこだまする様で屋外で聞くのにぴったりです。ファーブルの生まれ故郷だからでしょうが、観光客もいなかったであろうこのような場所にこれだけ大規模なテーマパークを作り出すフランスの文化に対する取り組み方に感銘しました。昆虫のことを考えるのにとても良いロケーションですし雨量の少ない南仏であるのも良かったのかも?
ファーブルの生家内の様子は東京文京区にあるファーブル昆虫館でも見学できます。
わずか2~3分で渡り終えるミヨー橋ですが、この橋のおかげでミクロポリスへのアクセスが飛躍的によくなりました。
ミクロポリスの紹介ビデオをご覧ください。(♬"普段は草陰や地下に潜んでいるが、今日は出てきてカーニバル、カーニバル!!・・")